※この記事はエッセイを元に、重要部分を抽出して書き直ししたものです。元記事はこちら
これは、大学病院で初期臨床研修医として働き始めたものの半年で休職、そして退職し初期臨床研修を中断した私の経緯とその後再開に向けてどのように生きたかを紹介していくブログである。
もし皆さんの身近に初期臨床研修医として働き始めたのに「もう辞めたい…」「つらい…」と言っている人がいたら、まずはその理由を尋ねたくなるだろう。
今回は、実際に初期臨床研修を中断した私の「初期臨床研修中断の理由」について記事にした。
今現在辞めようか悩んでいる研修医やこれからそうなるかもしれない人たちは勿論のこと、医療従事者の皆さんや研修医の生活に興味がある方にも是非読んでいただきたい。
はじめの頃は
ついに医者か〜…!!??
初期臨床研修医としてのスタート、期待と不安で訳が分からなくなっていたが夏まではなんとかこなせていた。
7月 院内でも最もゆるいと言われている某内科での研修が始まった。
ハイポ志向(「ゆるく」働きたいこと)なのでそれに不満等なく満足していた。
…はずなのに、7月半ば頃から毎日が苦痛になった。
理由
完全にこれ、とは言えないが今思うと恐らく以下の5つが理由だったと思う。
①尊敬できる医師
医師が互いに悪口を言い合っていた。
勿論、看護師の悪口も。
毎日毎日、聞き疲れるほどに。
他にも、コンサルしようと思って他科の知らない医師に勇気を振り絞って電話すると、まだ何も話してないのに不機嫌。そんなことも我慢ならない自分が情けないが本当に嫌だった。
②私が苦痛に思ったこと
私にとって日々カルテを書くことと、カンファレンス用の原稿を作ることは結構つらかった。これはしばらくすれば慣れたことかも知れないが、なかなか早く終わらない自分にいつも焦りを感じていた。
優しい先生が先にカルテを書いてくれたりすると嬉しい反面、自責の念でいっぱいになってしまうのだった。
③指導医不足
大学病院なのだから人手は十分にあるだろうと思っていたが、そもそも新体制だかなんだかで医師が大量にやめていたらしい。
加えて先生たちの外勤日が重なっていることが多く、自分の班の医師は研修医である自分一人だけ、そんなタイミングがかなりあった。
④そもそも無理
自然の流れに抗っている感じがする医療を、自分がしたいのかというとそうでは無いかもしれないと思った。
そして、救急外来や急変時など緊迫した状況がとても苦手だった。途端に険しい顔になる医師たち、どうしたらいいかわからず戸惑う自分…逃げ出したくなった。
⑤対応が酷かった
①~④の理由で次第に通勤中や勤務中にまで涙が出るようになり、精神科を受診すると「かなり鬱病に近い適応障害」と診断されまずは休職するよう指示された。
こういう診断が出て休みたいと思っている旨すぐに研修センターにメールをし、センター長(医師)と研修センターアドバイザー(医師2人)と事務員とで面談をした。
精神的に限界状態の私に、研修センターの医師たちは
「見た感じ大丈夫そうだしもう少し頑張ってみましょう」
「あなたが休んだら、あなたのことを待っている患者さんはどうなってしまうの?あなたを頼りにしてる上級医や同期は?」
などと言った。
休職を考えていた頃、まだシフトの出ていない当直に自分を入れないでほしいと二か月前から言っており研修センターの医師は「わかりました、心配しなくて大丈夫」と言っていたのにもかかわらず、結局自分のシフトががっつり(なんなら他の人より多く)入っていたりした。
そんな言葉の数々や対応を受けて、病院の臨床研修センターの事務員や医師たちに不信感を覚えたのだ。
最後に「こんな病院は選ぶな」
初期臨床研修中断を意識したきっかけは上記①~④の理由であったが、これらだけであれば中断まですることはなかったかもしれない。
なぜなら理由①~④は、どの病院で臨床研修を行っても起こりうることだからだ。ただ、理由⑤だけはどうしても受け入れられなかった。「こんな病院出ていかなきゃ」という気持ちが強くなったのだ。
臨床研修病院を選ぶ際には病院の臨床研修センター所属の事務員や医師たちがどのような人なのか、しっかり見たほうが良いと思った。研修医として働く上で、臨床研修センターとの関わりは思ったよりもウェイトが大きかったのだ。当直の日程、選択科目のローテ、休暇の取り方など研修医に関するほとんどのことは彼らが決めるからだ。
では具体的にどう見極めたらいいか。
まずはメールで研修センター事務員の対応を見るといいだろう。返信は速いか、適切な言葉遣いはできるか、提出書類の期限が直近過ぎないかなど。
そして研修医に聞いてみること。外部の人間から見てわからないことも、内部の人間なら毎日接する中で把握できているはず。病院見学で研修医と接したときに「ここの臨床研修センターの対応で困ったことはなかったですか」「今までに研修医で揉めたり嫌な思いをした人の話を聞いたことがありますか」などと聞いてみるべきだ。
この記事を書いたのは
医師、112回不合格、113回合格。医療エンタメトップライター、編集もこなしエンジニアとしても活躍。国試合格後、喜び勇んで初期臨床研修を始めるも半年で研修中断。そんな中折れ研修医がこれからどう生きていくのか臨場感をもってお届けする。臨床研修医を中断するにはどうすればよいのか、そして再開するにはどうすればよいのかを伝える。