解剖学に苦手意識を持つ医学生は多いのではないでしょうか。この記事では、学生が解剖学につまずきやすい理由を明らかにしたうえで、効果的な勉強法を紹介します。どのような本やアプリを活用するとよいかを押さえ、勉強を進めましょう。
解剖学で学ぶ内容は?
解剖学は基礎医学の科目のひとつで、人体の構造・機能を学びます。多くの大学で、医学部低学年(1~2年)のうちに履修する科目です。
解剖学で学ぶ内容の例は、以下の通りです。
- 骨学
- 筋学
- 内臓学
- 脈管学
- 組織学
- 発生学
- 肉体解剖学
- 神経解剖学
解剖学では、人体解剖実習も行われます。なおこの記事は座学の解剖学を対象にしているため、解剖実習については触れません。
解剖学は、今後さまざまな科目を学ぶうえで基礎となる科目です。そのため解剖学がきちんと理解できていないと、そのあと続くに多くの科目でもつまずきやすくなってしまうでしょう。
この記事で適切な勉強法や重要なポイントを押さえ、解剖学の理解に役立ててください。
こちらも参考にしてください。
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解剖学はなぜつまずきやすい?
一般的に低学年で受講する解剖学ですが、なかなか思うように勉強がはかどらない学生も少なくありません。解剖学をスムーズに身につけるためにも、まずは「つまずきやすい理由」を知っておきましょう。
覚えるべき専門用語が多く暗記量が膨大
解剖学で覚えるべき専門用語は膨大です。例えば骨・筋肉・神経の名称をすべて正確に覚えなければなりません。それら用語と併せて、人体の構造や機能同士のつながりを理解しなければならないため、論理的思考力も求められます。
解剖学用語として、日本語や英語に加えて、ラテン語も使われています。耳慣れせず、これまでに目にしたことがない言語に、戸惑う人も多いでしょう。
さらに、日本語の用語でも通常とは異なる表記・発話を行うケースが多数あります。例えば「腔」を「こう」ではなく「くう」と読むなど、あえて誤読が推奨される場合も多いため、注意しなければなりません。
こうした知識は医学の基礎部分をなしています。つまりその後さまざまな参考書籍や資料を読解したり、互いに議論したりするために必要不可欠な前提的要素です。
ただ、低学年生にとってはまだなじみのない用語・知識でもあります。それらが膨大に出現する解剖学に、苦手意識を持ってしまう学生も少なくないでしょう。その結果、思うように勉強が進まなくなってしまいます。
はじめからすべての用語を完璧に暗記しようとすると、なかなか勉強効率が上がらないでしょう。
「自分が得意な部分から集中して暗記していく」「単に単語を丸暗記するのではなく、各用語間の関係性を把握して覚えていく」など、自分なりに工夫して取り組むことが重要です。
立体的に捉える思考が必要
教科書や過去問に記載されたイラストは通常平面ですが、実際の人体は立体です。そのため人体構造を立体的に把握できなければ、解剖学の理解は難しいでしょう。
平面のイラストをただ眺めるのではなく、頭の中で回転させるようにイメージしてみましょう。同一対象についてのさまざまなイラストを見ることや、専用のアプリなどを利用すると、イメージしやすくなります。
解剖学の効果的な勉強法
解剖学の学習は、どのように進めればよいのでしょうか。先述のように解剖学は医学生の壁になりやすいですが、効果的な勉強法も存在します。
まずは過去問で出題の傾向をチェックする
解剖学も含め、テスト対策には過去問チェックが有効です。過去問を手に入れて、テストの全体像や出題傾向を把握しましょう。
もちろんほかの医学生たちも多くの過去問を解いています。周りに後れを取らないためにも、日々過去問を解きながら問題に慣れていきましょう。出題順・出題形式を体で覚えたり、頻出する問題と回答例は暗記したりすると効果的です。
過去問を解く中で疑問点や不明点が生じたら、レジュメや教科書などで確認してください。併せて、講義でとったノートを整理して参考になるポイントをまとめましょう。
「それらノートや講義のレジュメ、教科書などを照合しながら、疑問点・不明点をひとつずつ解決していく」というプロセスによって、着実に知識を培っていけます。
自分の身体を観察して絵に描いてみる
自分の身体を観察し、絵に描いてみるのも有効な勉強法です。解剖学の本と筆記用具を用意して、腕や足、胴体などをスケッチしてください。
自分の身体を触って動きを確認しながら描き、本と見比べて足りない点を追加すると効果的です。各部位の名称も書き出すことで、より深く理解できます。
「身体を観察しながら描く・イラストと本を照合する・何も見ないで描く」というサイクルを繰り返しましょう。何度もイラストを描くことで、記憶が定着しやすくなります。
図解付きなど、わかりやすい参考書を用いると効率が上がります。例えば、図解付きテキストの模式図を見本にして、イラストを描いてみてください。
MediE医師講師 凛子 先生のワンポイントアドバイス
解剖学は覚える事柄がとても多いため、暗記勝負の科目とも言えるでしょう。
スケッチなどを通して立体的な人体把握を欠かさないようにしつつ、過去問チェックを根気強く繰り返して、知識を頭に叩き込みましょう。
解剖学の勉強におすすめの本
解剖学の勉強を効率的に進めるために、おすすめの本を以下に紹介します。
解剖学カラーアトラス
「解剖学カラーアトラス」は、解剖学アトラスの中でも代表的な参考書です。
- 鮮明かつ美しい写真が掲載されている
- 図やイラストが豊富
解剖学カラーアトラスには、鮮明な標本写真や、最新の医療画像が使われています。序文には、解剖体の同じ部位と、MRI・CT画像と相関させ、比較することで学習効果が高まると述べられています。
掲載された写真から構造の細部まで明瞭に把握できるので、解剖実習の予習・復習をするうえでとても役立つテキストです。
イラスト解剖学
「イラスト解剖学」は、下記の特徴を持つ解剖学テキストです。
- 1ページごとの読切形式
- わかりやすいイラストが掲載されている
- 解剖学以外の医学的知識が多く掲載されている
イラスト解剖学は、解剖学を気楽に学べる導入テキストとして作られました。20年以上前に発行された初版から改訂が繰り返されており、2022年現在は第10版(2021年04月発行)が最新です。
解剖学的な人体構造や、解剖学的な原因で起こる疾患についても説明されています。ビジュアルで理解しやすく、暗記だけに頼らずに必要な知識を身につけられます。
MediE医師講師 凛子 先生の体験談
私もイラスト解剖学を愛用していました。難解な解剖学もイラストで解説してあるので、非常にわかりやすい本です。
グレイ解剖学アトラス
世界的に有名な解剖学テキスト「グレイ解剖学」に対応する、「グレイ解剖学アトラス」も名著として有名です。バージョンが多いですが、基本的には最新版を購入しましょう。特徴は以下です。
- イラストに加えて、写真、X線やCT画像などの医療画像が多く掲載されている
- グレイ解剖学以上に詳細な図が掲載されている
- グレイ解剖学と章立て・用語が対応している
- 各章末に、内容を簡単に振り返る表・概略図が掲載されている
情報量・イラストも膨大で、主要な神経叢や、動脈の分岐パターンなども記載されています。本には電子書籍へのアクセスコートが付いており、パソコンやスマートフォンからも閲覧可能です。
解剖学の勉強におすすめのアプリ
今日では解剖学の学習用アプリもいくつか公開されています。これらアプリを使えば、平面ではなく3Dで人体の解剖学的構造を閲覧できます。
アプリによっては、モデルの大きさやアングルを調整できるため、構造の理解により役立つでしょう。
複数端末で利用可能なアプリもあるため、いつでもどこでも簡便に学習可能です。以下でおすすめアプリを2つピックアップして紹介します。
ヒューマン・アナトミー・アトラス
ヒューマン・アナトミー・アトラスは、3D人体モデルアプリであり、タブレット・スマートフォン・パソコンで利用可能です。特徴やメリットは、以下の通りです。
- コンテンツ・機能が豊富
- 日本語表記も可能
- 3D解剖クイズがある
各組織を検索すると説明・動画が見やすく表示されるため、知りたい項目を素早く学習可能です。人体模型の筋肉や骨格を回転・拡大・縮小させながら、動きを確認できます。
モデル閲覧中は、選択した組織について表示・非表示を切り替えられます。さらに3D解剖クイズに取り組めば、自分の学習状況を把握可能です。
操作性に優れているうえ、日本語で説明を読めるため、英語が苦手な人でも手軽に利用可能でしょう。
【参照元】ヒューマン・アナトミー・アトラス
Complete Anatomy
Complete Anatomyは、海外の医学生が多用している解剖学アプリです。パソコンやiPad、スマートフォンから利用できます。
Complete Anatomyには、以下の特徴やメリットがあります。
- 動画をはじめとするコンテンツが充実している
- リアルな3D人体模型や、実際の写真などが組み合わされて使われている
- 各部位の名称発音の確認が可能
Complete Anatomyには非常に多くの機能が備わっており、さまざまな使い方・学習方法に対応します。
臓器の動きや血液の流れなども、視覚的に確認できます。加えて部位名称の英語発音を聞けるため、英語での正確な発音がすぐにわかる点もメリットです。
ただし、日本語対応はしていません。そのため、英語に不慣れだと使いにくい恐れがある点はデメリットかもしれません。また、利用するには年間ライセンスを購入する必要があります。
【参照元】Complete Anatomy
まとめ
暗記量が膨大であり、立体的思考も求められる解剖学は、多くの医学生が苦手意識を持つ科目です。過去問で出題傾向をつかみ、自分の身体をイラストに描くなどの方法を試してみましょう。
解剖学の勉強には解剖学カラーアトラスや、イラスト解剖学などの書籍や、ヒューマン・アナトミー・アトラスをはじめとするアプリの利用がおすすめです。
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