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医師国家試験の禁忌肢(きんきし)とは? 選択肢の例や禁忌肢落ちの対策

卒業試験に合格し、マッチングも決まったとしても、医師国家試験で失敗すればその後の将来設計に差し障りが出るでしょう。その医師国家試験で注意すべき要素の筆頭が「禁忌肢」です。本記事では、この禁忌肢について実際の過去問も紹介しながら解説し、対策のポイントを紹介します。医師国家試験合格を目指す方はぜひ参考にしてください。

そもそも禁忌肢とは?

何らかの試験において、決して選択してはいけない選択肢のことを禁忌肢と呼びます。すべての試験にあるわけではありませんが、試験によっては選択問題の内の何問かに、この禁忌肢を設定している場合があります。

評価者側の禁忌肢の扱いには、「特定の数以上禁忌肢を選んでしまった受験者を失格とするパターン」「1問でも禁忌肢を選んだ受験者を即刻失格とするパターン」の2パターンがあります。前者のパターンは、受験者がマークミスなどで、故意ではなく禁忌肢を選んでしまった場合も考慮しています。

医師国家試験は、この禁忌肢が設定されていることで有名な試験です。全400問中、複数の禁忌肢が置かれています。

パターンとしては「複数回禁忌肢を選んだら失格」ですが、やはり受験者としてはひとつも選ばないよう、確実に見分けられなくてはなりません。たとえほぼすべての問題に正答していたとしても、禁忌肢を規定数以上選んでしまったら、即刻失格になるからです。
医師国家試験では、禁忌肢の多くは臨床に関する選択問題に設定されています。基本的には「その処置方法を取った場合に、患者の症状を重度に悪化させてしまう」といった選択肢として、設置されています。

一般に、医師国家試験の難易度は各大学医学部の卒業試験よりもやや易しいと言われており、合格率は毎年9割に上りますが、少数は不合格となっています。そうした不合格者の中には、禁忌肢を選択してしまっている受験者がおり、そうした不合格方法を指して「禁忌肢落ち」と呼ぶこともあります。
厳しい卒業試験を乗り越え、研修先の病院が決まっていたとしても、肝心の医師国家試験で禁忌肢を選んでしまうことで、そうした成果を台無しにしてしまう恐れがあります。以下、禁忌肢が設置されていた過去問を紹介するので、試験対策に活かしてください。

第116回 医師国家試験の禁忌肢問題について

実際に令和4年2月の医師国家試験で出題された禁忌肢入り問題の実例です。「禁忌」とされる理由を含めて紹介します。

116D48 尿道カテーテルの処置に関しての問題

85歳の男性が、肺炎球菌性髄膜炎で入院中であり全身状態が悪化しているため尿道カテーテルを留置しているという設定の設問が出題されました。患者の状態とともに、腹部CT矢状断像と冠状断像が示され、この患者にまず行うべき処置は何かが問われました。

この問題には「尿道カテーテルを押し込む。」「尿道カテーテルをそのまま牽引して抜去する。」という選択肢含まれており、この2つが禁忌肢であったと考えられます。
症状や写真から「尿道カテーテルの不全自己抜去による尿道損傷」だと推測し、2つの回答が患者の尿道を損傷させる危険性が高いと判断することが必要な問題でした。

実際の症状や問題の詳細は以下のリンクで確認することができます。

問題48

問題48(図)

116D46 突然の激しい頭痛と急激な両側の視力低下が生じた場合の対応についての問題

72歳の男性が突然の激しい頭痛と急激な両側の視力低下を訴え来院した際の、適切な治療方法を問う問題が出題されました。患者の様態と頭部単純CTの冠状断像と矢状断像をもとに、正答を判断します。
この問題には「腰椎髄液持続ドレナージ」という禁忌肢が含まれていました。頭蓋内で生じている占拠性病変なため、頭蓋内圧亢進を避ける必要があると判断しなければなりません。

なお、このような頭蓋内占拠性病変を伴う症状が問題として出題されている場合は、禁忌肢が設置されているケースが多いため注意してください。

実際の症状や問題の詳細は以下のリンクで確認することができます。

問題46

問題46(図)

また、実際の試験では、このD46から1問を挟んで、先に紹介したD48が出題されました。このように、「禁忌肢ありの問題」が続くケースもあると認識しておきましょう。

116D38 グラム陽性球菌が認められる場合の処置についての問題

左下肢を動かさない6か月の女児について、処置方法を問う問題が出題されました。前日からの様態や過去の疾患状況、血液検査の情報などをもとに回答を判断するものです。問題文にある「グラム陽性球菌が認められた」という記載から、選択肢のうちの「副腎皮質ステロイド左股関節内投与」が禁忌肢と考えられる問題でした。副腎皮質ステロイド投与は感染の増強につながるため、避けなければいけません。

実際の症状や問題の詳細は以下のリンクで確認することができますので、チェックしてみてください。

問題38

医師国家試験で禁忌落ちしないための対策とは?

上記の事例3つは、禁忌肢を選択してしまった人が比較的多い問題でした。ただ禁忌肢の置かれた問題自体は、1試験につき10個以上存在すると考えられます。そうした禁忌肢を避けながら、国家試験合格を目指すには次の3点が特に重要です。

正答率が高い問題を落とさないようにする

まずは正答率が高い問題、つまり比較的易しい問題を確実に回答できるように、自分の知識や思考力を安定させておくことが重要です。
医師国家試験は例年、正答率の高い問題が多くを占めています。これらの問題について、他の受験者と同じように滞りなく回答できることが、合格者の前提レベルとなります。
特に、必修問題については80%以上正答しなくては合格基準を満たせません。必修問題は「医師として知っておくべき最低限のこと」を問うもの、つまり一般・臨床問題に比べて回答しやすい問題と認識されています。しかし、中には高い難易度の必修問題、禁忌肢に警戒すべき問題も含まれています。医師国家試験では、1問にかけられる回答時間の平均は2分程度であるため、なるべくそうした高難易度問題に思考時間を割けるよう、易しい問題は確実かつ迅速に正答しましょう。
対策としては、「過去問を多く解き、頻繁に出題される問題パターンと正答とを対応させて覚える」という王道の勉強方法が一番です。卒業試験の勉強から引き続き、知識を確固たるものにしていきましょう。

問題文はしっかりと読む

国家試験の難易度は、卒業試験を突破した能力があれば基本的には合格できるレベルと言われています。そのような試験で恐いのは、ケアレスミスです。例えば、過去問や卒業試験でも出会わなかったような問題に相対したときなども、決して焦ってはいけません。そうしたときこそ、問題文をしっかりと読み、冷静に正答を導き出しましょう。
また、医師国家試験には、五肢択一式の選択問題のほかにも、正答を2~3個選ぶもの、または6肢以上の中から正答を選ぶものも出題されます。特にこれらについて、迅速・適切に対応していくには問題文をしっかりと読むことが重要です。

問題文内の特定のキー用語や数値に線を引くなどしながら、状況や示唆されている症状をしっかりと読み取っていきましょう。それらの用語・数値を整理して把握できていれば、選択肢内に禁忌肢があった場合も回避可能です。また、こうした状況整理に時間のかかる問題に落ち着いて対処するためにも、先述のように、高正答率の問題はスムーズに解けるよう徹底して訓練しておきましょう。

絶対に違うであろう選択肢が含まれていないかチェックする

禁忌肢を含んだ問題としては、例えば先述の116D46・D48のように、特定の用語(頭蓋内・下垂体・グラム陽性球菌など)が、特定の禁忌肢のヒントになっているケースが大半です。問題文をよく読むことと併せて、禁忌肢を含むこうした「明らかに誤った選択肢」には印をつけるなどして、回答時に選択しないよう目立たせておくことが有効です。
そうした選択肢を除外した残りの中から、正答を絞り込んでいきましょう。先述しましたが、問題によっては正答が2~3個求められる場合があるので、そうしたケースではより慎重に選択肢内容を比較します。ときには消去法の使用も検討し、冷静に回答してください。

医師になってから誤った診断・治療を行ってしまえば、患者の命を危険にさらします。禁忌肢を含め、誤った回答を選択することはそうした恐れにつながっていることを認識しながら、試験中は常に緊張感を維持しましょう。

MediE医師講師 凛子 先生のワンポイントアドバイス

禁忌肢といった「明らかに誤った選択肢」は、ビデオ講座や「クエスチョン・バンク(QB)」といった国家試験問題の解説本でも言及されていますので、それらを繰り返しチェックしておくとよいでしょう。そのうえで禁忌肢を選ばないように、禁忌となる理由をしっかりと理解しておくことが大切です。また過去問や模試でも、回答に禁忌マークがついていますので、正誤チェックの際に併せて確認するようにしましょう。

禁忌肢はいくつまでなら選べる?

医師国家試験の合格条件には、「禁忌肢回答が3問以下」というものがあります。開催年によって数が変わる場合もありますが、基本的には「4問以上禁忌肢を選んだ場合は即失格」と理解しておいて差し支えありません。
なお、過去問についても、出題側(厚生労働省)がどの選択肢を禁忌としているのかについては公表されません。そのため過去の禁忌肢については、専門の対策塾などの過去問分析・解説をチェックするのがおすすめです。

医師国家試験の準備をしっかり整え、禁忌問題にも対応できるようにしよう

医師国家試験は通常、卒業試験の数ケ月後に行われ、問題内容としても共通する要素が多い試験です。したがって、卒業試験を突破できた実力があれば、それを再び十全に発揮することで合格も可能です。
とは言え、油断をしてはいけません。医学総論・各論からの出題にも備えなくてはならない上に、本記事で解説した禁忌肢への警戒も怠らないことが必要です。こうした対策を充分に取るためには、自身の体調・メンタル管理までしっかりと行いつつ、国家試験本番から逆算して、明確なスケジュールを立てましょう。特に、卒業試験を通して不安に感じた要素や、疑問のまま残って要素がある場合は、早めにそれらを解決するよう予定を組んでください。
その上で、なるべくメジャーな科目については早めに勉強を終わらせ、各論などのマイナーな科目についての知識を詰めていく方針で全体のスケジュールを立てるとよいでしょう。

まとめ

医学部6年の最後に待ち構えている、医師国家試験。培ってきた実力を十分に発揮し、平均的な結果を出せれば高い確率で突破は可能ですが、禁忌肢には最大限の注意を払わなければなりません。本記事で紹介したポイントを押さえ、確実に回避できるよう学習に励んでください。

また、卒業試験から国家試験までの限られた時間で効率的に勉強するためにも、専門塾を利用することは有効です。「Medie」では現役医師が講師となり、一人ひとりに最適化したカリキュラムで国家試験合格をサポートしています。通学でもオンラインでも通えるため、試験に不安・疑問を感じていたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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