医学生のみなさんは色々な教材がある中、勉強方法に迷ってしまっている方もいるかと思いますので、私が代表となり運営している寺子屋型医師国家試験指導塾MediEで推奨している勉強方法をここで共有していこうかと思います。
この勉強方法は大学の学生であっても浪人生であっても、そしてどの予備校教材を使っていても大きく外れることはありませんので、参考にしながらご自身なりにアレンジしてくださればと思います。
Phase1 理解、input期(〜7月中旬)
まずは予備校教材の動画を視聴して、色々とノートに書き込みましょう。ここでいうノートというのは白紙のノートではなく、予備校教材で配布し使用される教材のことです。
予備校の先生の言っていることをなるべく一言一句書き漏らさず進めていくことが大事です。その中で、問題演習を必ず行っていただきたいのですが、予備校教材にある問題は全て当たっていただきたいと思います。
そのやり方として、このPhase1では答えありきでなぜその答えが(例えば)a.になるのかなど、自分なりに導き出せるようにしてください。極論を言えば、意味がわからなくともそっくりそのまま予備校の先生が言っていることが吐き出せるだけで構いません。
具体的なやり方
例えば以下のような設問があるとします。
113A24
45 歳の女性。発熱、咳嗽および呼吸困難を主訴に来院した。1週間前の7月初めに咳嗽が出現し、3日前から37°C台の発熱があり、昨日から呼吸困難も伴ったため受診した。3年前から毎年6月初旬から8月にかけて同様の症状を起こし、昨年も入院加療している。3年前から築25年のアパートに暮らしており、室内には趣味の観葉植物が多くあるという。両側胸部に fine crackles を聴取し、胸部エックス線写真ではびまん性散在性粒状陰影を認める。Trichosporon asahii 特異抗体が陽性である。
この患者で認められる可能性が低いのはどれか。
a IgE 高値 b 帰宅試験陽性 c 拘束性換気障害
d 肺の病理所見で肉芽腫 e 気管支肺胞洗浄液 CD4/CD8 比低下
この問題に対して白紙の状態で上から読んでいってうんうん唸っているのは得策ではありませんし、何より時間の無駄です。
この問題の場合、以下のようにして準備しておきましょう
そして解答解説を読みながら、見ながら、その答えがなぜそうなるのか他者に伝えられるようになっていればそれでOKです。これ以上の情報は不要です。仮に隠すとしても解説部分を隠すだけで十分です。
この状態で解説部分が思い出せるかどうかを確認すればOKです。
もしこの問題で勉強するにあたり他のことが気になるのであっても、ノートのページに戻って1からアレルギーや呼吸器の該当部分を読み耽ってはいけません。教材にある問題を全問当たる予定ですので、他に覚えていない箇所があったとしてもどうせ他の問題をやるときに見ることになります。ですから、一問一答のような形で演習して構わないのです。
ペースとしては
メジャーでも腎臓や血液など動画が短い科目は1週間に2科目、重い科目で1〜2週間で終わらせるようにしましょう。どんなに遅くとも7月の中旬までには全科目を一周できているようにしてください。これでPhase1が終了です。
ただし、Phase1が完了してもまだ得点には結びつかず、初見の問題には苦戦することが想定されます。このPhase1では模擬試験などで間違えた問題を、解答解説をみて意味が理解できればそれで良いとしてください。自分の中で落とし所をつけ、それ以上はまだできなくていいんだと言い聞かせてください。一度で完璧にするのは不可能ですし周りのみんなもどうせそうです。
Phase2 output(7月中旬〜11月)
7月中旬からはPhase2です。動画を視聴するのはもう終わりにして、問題演習をメインにやっていきましょう。お手持ちの予備校教材が先ほど示した
という状態になっていればもうそれでPhase2をスタートさせられます。要は答えの部分を隠せば良いので、準備で難しいことはありません。ここではようやく理解している→できるになる大きな転換の時期です。しかし、全くの白紙では何もわからないという状況があるかもしれません。厳しいことを言うようですが、何度も絶望して這い上がってきてください。白紙の状態から他者に説明できるくらいまで持っていきましょう。
このPhase2では全体の80%ほどが「白紙の状態から他者に説明できる」になっていれば十分かと思います。この白紙の状態から他者に説明できると言う状態の科目が増えれば増えるほど模試の点数が上がってくるでしょう。今までは味わえなかったテストの復習をしていて楽しいという時期に入るかと思います。
このPhase2の進み具合によってこの時期に回数別5年分を入れ込むかどうかの判断をしましょう。早めに80%ラインを超えているようでしたらこの時期から回数別の問題演習を組み込んでも良いかと思います。
Phase3 イヤイヤ期(11月〜1月)
Phase2のところでもお伝えしたように、白紙の状態から他者に説明できるのはここでもまだ80%程度です。この時期はリミットはどんどん近づいてきているのに、説明ができない部分がまだたくさんあるように見えてしまいます。11月までにはもっとできるようになっているはずだったのにこんなはずではないと思い、何をするにももう嫌になる時期かと思います。
何度やっても、さっきはできたはずなのに…こんな問題が増えてきて、不安が増幅します。知らない問題を模試で見かけ、Twitterで見かけ、聞きたくもないのに周りの友人が何やら話をしていて…。
しかしながら、この時期は自分の苦手な分野が浮き彫りになっている時期でもあります。その分野に合わせた対策を行なっていくようにしましょう。該当箇所の予備校各社の対策講座を見るもよし、Phase1でやっていた動画視聴を今一度改めて見るもよしです。
合わせて、残り20%で完成に迫っている「白紙の状態から他者に説明できる」の部分は引き続き行なっていきましょう。Phase4にはこの「白紙の状態から他者に説明できる」は全体の90%を超えるようになっていればそれで良いくらいです。
公衆衛生の暗記ものを詰め込む時期にもなっていますので、Phase3開始までにはノート作成を終了させるようにしましょう。
回数別を5年分やりましょうと言う人が多いですが、遅くとも11月ら辺で始めるのが良いかと思います。回数別の取り組み方に関してはまた別記事でアップします。
Phase3も終盤になってくると模試での成績は安定してくる頃かと思います。
Phase4 混沌期(1月〜国試本番当日)
ここまできたらすでに合否は決まっています。あとは体調管理です。
よく、この時期にメンタルをやられる人から国試に落ちるなどと言う人がいますが、それはここまで適切な準備をしてこなかった人が合格基準と自信の置かれている場所のギャップを理解してしまい、絶望してメンタルがやられているわけです。つまり、ここでメンタルをやられるから落ちるのではなく、ここまで適切な準備ができていないからメンタルがやられるのです。
このPhase4では問題演習も佳境に入ってきていて覚えられないものはとことん覚えられないどうしようと言う状態に陥るかと思います。
もうそうなったらその分野とは相性が悪かっと思って割り切ってしまいましょう。理解しようなんてしなくて良いです。該当の問題を一問一答形式だと思って丸暗記してください。もういいです。
他の聞かれ方したらどうしようとか他の人はできているはずなのにとか考え出したらキリがありません。
合格点を取っている人であっても正答率90%を超えている問題を何問か間違っていたりします。この時期はその数を極力減らしたり、できるはずの問題を落とさないようにする努力をすれば良いだけです。
この記事を書いたのは
医師、株式会社YTN代表、医療エンタメ主宰、医師国家試験個別指導塾MediE代表。留年も浪人も経験。会社経営とともに医師国家試験予備校MediEで講師を行っている。このウェブページではライターとしてだけではなく、寄稿された文章の校正・校閲、編集作業も行い、各方面との連絡調整を行っている。取締役というよりは取り締まられ役。