この記事は
医学部6年生の方々は夏〜秋には卒業試験やマッチングそしてPost CC OSCEが行われ、やることが多くて大変な時期であるかと思います。
医療エンタメでは、弊社で運営している医師国家試験向け個別指導予備校MediEで行っている練習用のPost CC OSCEシートを、MediE会員以外の学生の方にもいくつか公開しようという運びとなりました。
そこで今回はPost CC OSCE練習用シートをご覧になる前の、練習シートの使い方を解説しようと思います。
まずはこちらの医師役用のシートをご覧ください
受験者用課題シート
【課題シート1】
あなたは初期研修医です。
外来にやってきた以下の患者さんに問診してください。
〇〇△△さん 27歳 女性
【課題シート2】
身体所見は以下の通りです。追加の診察を行ってください。
身長158㎝、体重48㎏
体温36.6℃、脈拍86/分 整、血圧110/68㎜Hg、呼吸14/分
【課題シート3】
上級医にこの患者さんについて報告してください。
OSCEはどのようにして進行するの?
恐らくどこの大学でもシート1、シート2あわせて通しで12分間。そして続けてシート3を4分間で行うこととなるでしょう。
シート1,2の12分間では問診と身体診察を通しで行い、シート3ではそれらを自分なりにまとめて上級医に報告するということになると思います。
これしかない情報から患者役から情報を引き出し、上級医に報告するというのがPost CC OSCEの一連の流れです。
以下の情報が患者役の情報です
医師役と患者役に分かれて使ってみてください。
医学生同士で使うのであれば見るだけで意味が通じるかと思いますので、そんなに難しく考えずにご利用ください。
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O(onset発症様式):体動時のふらつきと体のだるさ(全身倦怠感)
P(palliative/provocative 増悪・寛解因子):体動時に増悪
Q(quality/quantity 症状の性質・ひどさ):全く動けないほどだるい
R(region/radiation 場所・放散の有無):とくになし
S(severity/associated symptom 程度・随伴症状):全く動けないほどだるい/頭痛、頭重感、労作時の息切れの増強、気分がすぐれない(抑うつ気分)
T(time course 時間経過):1か月ほど前から現在まで増強している
P(past medical history 既往歴):とくになし。健康診断で今年の春に初めて貧血を指摘された。
A(allergiesアレルギー):なし
M(medication 服薬歴):なし
H(hospitalization 入院歴・手術歴):入院・手術はしたことがない。輸血歴なし
U(urinary 排尿):変化なし
G(gastrointestinal 消化器症状・排便・食欲・体重変化):便秘、下痢、血便なし。食思不振あり。体重の変化は不明。異食症なし。
S(sleep 睡眠):入眠障害なし、中途覚醒、早朝覚醒あり
F(family 家族歴):母が橋本病。
O(OB/GYN妊娠歴・月経歴 ※質問の前に配慮の言葉を添える):月経28日、整。最終月経10日前。最近はやや経血量が増加しているように感じる。
S(social history 喫煙歴・飲酒歴・職業・趣味・渡航歴・ストレスなど):飲酒なし、喫煙なし。会社員で最近は環境の変化や就業時間が長くストレス過多。趣味は映画鑑賞だが時間は取れない。渡航歴は半年前に海外旅行。
S(sexual history 性的活動):週に数回程度で特定の相手のみ(※質問の前に同意を取ること)
解釈モデル:抑うつ気分もあるので貧血とうつ病の関連も気になる。母親が橋本病なのでそこも今回の自分と症状どう関係するのか気になっている。以前の健康診断でアセトン3+と言われたが何のことだか分からなくて不安があるので教えてほしい。
【身体所見】
意識清明
身長158㎝、体重48㎏
体温36.6℃、脈拍86/分 整、血圧110/68㎜Hg、呼吸14/分
頭頚部:毛髪異常なし、眼瞼結膜に貧血・眼球突出なし、口角炎なし、嚥下障害なし、甲状腺腫脹・圧痛なし
胸部:心音は心尖部に2/6度の収縮期雑音を聴取、呼吸音は正常
腹部:平坦、肝と脾とを触知しない
四肢:さじ状爪なし
その他:特記事項なし
ポイント
模範解答を載せておきますが、ここまでしっかりやる必要はないでしょう。
公開してある記事の”ポイント”部分には、模範解答ではなく医師の視点でのポイントを記載しておきますので、ご参照ください。
想定疾患のキーワード
・全身倦怠感
・労作時の息切れの増悪
・健診で貧血を指摘
・食思不振
・抑うつ傾向(含 睡眠障害)
・心音:心尖部に2/6度の収縮期雑音を聴取
・眼瞼結膜は貧血様
鑑別疾患のキーワード
・母親が橋本病(甲状腺機能低下症)
・最近はやや経血量が増加しているように感じる(過多月経)
・気分がすぐれない(抑うつ気分)
想定している疾患
鉄欠乏性貧血
今後の検査方針
・血液検査
→何を疑って何を見るか
→鉄欠乏性貧血を疑ってHb、鉄、フェリチン、MCV、MCHC。橋本病を疑ってTSH、FT4、FT3。
・器質性疾患を除外できたらうつ病を疑って精神科医へのコンサルト
・婦人科疾患(過多月経・子宮内膜症)を疑い内診、経腟エコー
・妊娠反応(除外するため)
鑑別疾患
・うつ病
・橋本病
・子宮内膜症
上級医への報告例
〇〇△△さん、27歳の女性です。主訴は体動時のふらつきと体のだるさです。
半年前の健康診断で貧血を指摘され医療機関の受診を勧められていたが、仕事が忙しく受診していませんでした。1か月ほど前から体動時のめまいと体のだるさが増強し受診されました。体重の増減は不明です。随伴症状として食思不振と中途覚醒、早朝覚醒があります。
家族歴として、お母さまが橋本病です。
月経は28日型 整であり、最終月経は10日前ですが、最近は経血量の増加を認めているそうです。
バイタルサインに異常はありません。眼球結膜は貧血様です。心音では心尖部にⅡ/Ⅵ度収縮期雑音を認めますが、貧血によるものかと考えられます。その他身体所見に異常は認められませんでした。
以上より、鑑別として食思不振と経血量の増加から鉄欠乏性貧血、他に橋本病とうつ病、過多月経の原因として子宮内膜症も上げられます。
今後の検査としてはご本人の希望で橋本病やうつ病の精査も考慮して血液検査をしたいと思います。必要な項目は鉄欠乏性貧血を考えてHb、鉄、フェリチン、MCV、MCHC、TIBCを、橋本病を考えてTSH、FT4、FT3を検査したいと考えます。
また過多月経を疑い婦人科にコンサルトして内診や経腟エコーを、器質性疾患が除外できたらうつ病の精査のために精神科へコンサルトしたいと考えています。
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最後に
みなさん、ぜひこのシートを使ってOSCEを乗り切ってください!
色んな疾患のシートを載せていく予定ですのでお待ちください!!
医療エンタメ、MediEスタッフ一同